早すぎる時計



G1 5勝のブエナビスタを筆頭に2010年3歳クラシック勝ち馬2頭に秋の中長距離路線を賑わせた馬
そして今年の宝塚を制した馬 今回出走していない現役トップクラスの古馬
ヴィクトワールピサ
ナカヤマフェスタ(引退)
ヒルノダムール
の3頭(実質2頭)ぐらいしか見当たらないほどの豪華メンバーが揃った今年の天皇賞(秋)
抜群のスタートと共に飛び出したのはやはり1枠1番シルポート
続いて枠を利して3枠6番ビッグウィークが続きこれも抜群のスタート(結果論としては良過ぎたのが敗因か?)
を切った2枠4番エイシンフラッシュが3番手
そこに出方を注目されていた大外8枠18番のアーネストリーが手綱をしごいて先行集団に張り付く展開
それを見る形で6枠11番ローズキングダムが"普通のペースなら"抜群の位置取り
一方1番人気の3枠5番ブエナビスタはちょうど中間の位置取り
これも結果論から言えば少し前目だったのかと思うも後の祭り
ただし今回最大の上がり馬として注目されていた2番人気の4枠7番ダークシャドウはそのブエナビスタの少し前に居たことから
戦前の調教師の発言通り"本調子"でなかったのだろうか・・・ともあれ最終的に幾つG1タイトルを積み重ねるのか?と言われたブエナビスタ
これで1年間タイトルを上積み出来なかったという事実のみが残ることになった
一方今回の勝ち馬である7番人気6枠12番トーセンジョーダンはこれらの有力馬達の後ろに付ける位置取り
そのやや後ろに4枠8番ペルーサが位置取る
戦前の私の予想に近い隊列でレースは進みやがて1000m通過
タイムは"56.5"超がつくハイペース
この時点で私が画策していた前残りはありえないと確信
そして一体どんなタイムで決着するのか?というのが残された興味となる
まもなく府中の長い直線に入り坂に入る頃から次々と先行馬が沈んでいく
逃げたシルポートは当然ながらやはり先行集団に張り付く為にスタートで足を使っていたアーネストリーが無抵抗で消えていく瞬間
鞍上の佐藤哲三騎手と調教師の佐々木昌三心境はいかがなものだったのだろうか
もしかすると枠順が確定したときにブエナビスタ松田博資調教師に「枠順交換してくれませんか?」と発言していたとき
この結果は既に想定していたのかもしれないが・・・
その飲み込まれていく先行集団の中唯一粘っていたのがエイシンフラッシュ
この馬の不幸はスタートの良さと展開がダービー以降常に逆になってしまう事かもしれない
やはりダービーを勝つ為に運を使い切ってしまったのだろうか?
個人的に好きな馬だけに展開とスタートが噛み合ったレースをまた見てみたいものだ
超ハイペースによる脱落戦の様相を見せてきた直線残り200mの処で抜け出してきたのはダークシャドウトーセンジョーダン
その後ろから内を付きブエナビスタが追い込んでくるがいつもの勢いは感じられない
代わりに大外から追い込んできたのがペルーサであったが前を行く2頭を捕まえきる事は出来ずに終戦
陣営はこのレースで賞金を積み重ね次走ジャパンカップに出たかったようだが
3着という賞金を積み重ねることが出来ない着順に終わりその目標も露と消える
思えばこの馬の歯車が狂ったのはダービーからだったがその狂った歯車を戻すにはまだ時間が必要なのだろう
そもそも春の天皇賞からこのレースにぶつけて来るというローテーションに問題はなかったのか?
有り余る才能は誰しも認めるところだが現実としてG1未勝利の馬に対して過度な期待をし過ぎていたのではないのかと思わずにはいられない
皮肉なことに今回の1.2着馬が全出走馬の中で4頭しか居なかった"前走に夏から秋のステップレースを使って勝っていた馬"
だったのが私の考えに拍車を掛けてしまう
競争馬という生き物ははかなく消耗しやすく担い手が少し間違っただけで壊れてしまうもの
大事に使いたい気持ちは十分すぎるほど解る
だが大事に使う事とレースに使わない事はまた別の意味を持つ
本当に大事にしたいなら功労馬として自分でペットの様に飼えばいいが
競馬における競争馬とは実際には生れ落ちた時から経済動物としての価値を求められ
価値の無いものは淘汰され価値のある物のみが生き残る
これこそが血のロマンと言われる物の正体であり実情は結果至上主義の産物に過ぎない
だからこそ自分の優れた血を残す為に馬は走るのであり
その蜻蛉にも似た一瞬の輝きに人々は魅了されるのだから
ペルーサという優れた才能に残された時間は既に多くはない
生きるも死ぬも陣営の尽力に掛かっていることを肝に銘じて精進して欲しい
閑話休題
レースは1分56秒1という2008年の同レースでウオッカがたたき出したレコードタイム1分57秒2を更に1秒1短縮するレコードタイムだった
正直直線が長い東京競馬場とはいえ直線に坂があるコースで56秒前半のタイムが叩き出されたのは驚愕に値する出来事で
(直線に坂がない競馬場で本州に位置する京都や中京 新潟では既に56秒台が出されている)
このような結果になった要因は道中のハイペースだけではなく勝ったトーセンジョーダンダークシャドウの潜在能力の全てが搾り出された結果なのだろう
だからこそ私はこのレースの上位馬が潜在能力を搾り出された結果"燃え尽きて"しまってないか?と心配せずに居られない
上位陣の何頭かは次走に来月のジャパンカップを走ることになるだろう
出来れば次回のレース時今日素晴らしいレースを見せてくれた馬達に今回の反動が"事故"という形で出ないことを祈るのみである
何年競馬をやっていても馬がレース中に壊れる姿を見るのは決して慣れることはないのだから・・・
最後に未だ情報が入ってこない今日の天皇賞(秋)を完走する事が出来なかった5枠10番メイショウベルーガが無事である事を願って
本日はコレにて失礼。